学びの空間と「音」②~学ぶ場における環境調整としての「音」~
- #渡邊陽亮
 
				小さく調整できること
前回のコラムで「音」について話しましたが、音は必ずしも心地よいものばかりではありません。状況によっては、音を「小さく調整する」ことも必要です。つまり、ノイズとしての音への対応ですね。
例えば、椅子を引く音や机がずれる音は、集中を妨げることがあります。私が勤務していた学校では、椅子の脚に十字に切り込みを入れたテニスボールを装着し、移動時の音を軽減していました。こうした小さな工夫でも、教室全体の落ち着きや子どもたちの集中力に大きな影響があります。

アシスティブテクノロジーを使う
全体で工夫をしても、それでも音が気になる子がいる場合があります。
そんな時は、その子に合わせた個別の音の調整が必要です。
私が勤務している京都大学の障害学生支援部門(DRC)では、音に関する支援にアシスティブテクノロジー(AT:支援技術)を活用しています。ノイズキャンセリングイヤフォンや補聴援助システムがそれに当たります。
こうした機器を使うことで、感覚過敏がある子や聴覚障害の子でも講義や学習に集中しやすい環境をつくることができます。
ATを使う時にとても大切なのが、「フィッティング」という考え方ですが、このことについては、また、改めて詳しくお話ししたいと思います。
いつでも使えること
環境調整として音を活用する時、とても大切なのは、「いつでも使えること」です。
私はBluetoothスピーカーを使って音楽を流していました。手頃な価格で持ち運びも簡単なため、授業や活動のさまざまな場面で活用できます。私も担任をしている時に思っていましたが、前提として「いつでも使えるもの」でないと、日々の業務に追われる学校現場ではなかなか定着しないと思います。その点では、このスピーカーはとても便利でした。最初は私だけが使っていましたが、その使いやすさが広がって、年度末には全クラスにスピーカーが常備されるようになりました。

学ぶ場における環境調整としての「音」は、ユニバーサルデザインや合理的配慮につながる大切な視点です。それぞれの学校で、どんな風に調整していくか、ぜひ考えてもらえたらと思います。
京都大学の高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP)では、障害学生の「学びやすさ」「生活しやすさ」を支援するためのATを紹介・提供していますので、ATについてもっと詳しく知りたい方は以下のHEAPの公式サイトもご参照ください。
→https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/heap/at/
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