学びの空間と「音」①~学びの空間で「音」という環境を考える~
- #渡邊陽亮
学校の音
鉛筆を走らせる音、食器を片付ける音、始業を知らせるチャイム、夕方に流れる「今日の日はさようなら」の音楽。さっきまで仲良くしていたあの子とあの子の喧嘩の声も、教室から聞こえる笑い声も学校ならではの音です。
こうして考えると、学校には、さまざまな「音」があふれていて、「よい音」もそうでない音も混ざり合っていることに気づきます。
何となくしんどい時の正体
では、「よい音」とは何でしょうか。
残念ながら、学校では「音を効果的に活用する文化」がまだ十分に根づいていないように感じます(もちろん、工夫されている学校もたくさんあります)。
例えば、マラソンの時間にのんびりした音楽が流れていたり、朝の時間に落ち着かない音楽が流れていたりすることがあります。そんな音と場面がちぐはぐな時、子どもたちはなんとなくしんどさを感じます。
学校の「よい音」とは、その環境や目的に合っていて、子どもたちの心と体に寄り添ってくれる音といえるかもしれません。
日曜日の朝は南国気分
私たちも日々の生活の中で、気分や状況に合わせて音楽を選び、空間を整えています。
日曜日の爽やかな朝を想像してみてください。南国を思わせる音楽が流れてくると、自然と心が緩み、穏やかな気持ちになります。そこにコーヒーとチーズトーストがある。とても素敵な1日になりそうな予感がします。
けれどもそんな時、あの「サメが近づく音楽」が流れてきたらどうでしょう。一瞬で雰囲気は崩れ、心がざわつき、落ち着かなくなります。
どうやら「音」には、空間を作ったり、整えたりする力がありそうですね。だからこそ、学びの空間でも「音」という環境を考えることが大切です。
音にはメッセージを込める
こうした現状を踏まえ、私は教室の音を考える時、「よい音」を意識的に使ってきました。そしてそこに、ほんのりとメッセージを込めました。例えば、
*朝の時間:ホテルのロビーのような落ち着いたピアノ曲
→ 「穏やかに心を整え、静かに準備をしてスタートしようね」
*図工の制作時間:滝や波、森などの自然音
→ 「自然の中にいるような気持ちで、想像力を広げてみよう」
*休み時間:ジブリ音楽のオルゴール曲
→ 「思い思いにリラックスして、友だちと楽しく過ごしてね」
*体育の時間:「ランナー」などテンポのよい音楽
→ 「気持ちを高めて、体を思い切り動かしていこう」
音は、目には見えませんが、私たちの気持ちや行動に大きな影響を与えています。教室にあふれる「音」に気づき、「この音は子どもたちにとってよい音だろうか」と意識して整理することで、学びの空間はきっと、変わっていきます。
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