チック症・トゥレット症の理解と対応⑩~トゥレット症と併発症~

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  • #チック症・トゥレット症の理解と対応
  • #相澤雅文

トゥレット症と併発症についてです。

 トゥレット症は発達障害≒(神経発達症)の1つとされています。発達障害や神経発達症(neurodevelopmental disorder)は、情動・学習能力・自己コントロール・記憶といったさまざまな認知活動に影響する、脳機能発達上の障害を示す概念です。脳機能に関連することから、他の症状が併発することは、当然のようにあると考えられます。
 さて、トゥレット症との併発症としては注意欠如多動症、限局性学習症、発達性協調運動症といった発達障害が併発することがあります。また、知的障害との併発もありますし。その他に強迫症、怒り発作、不安症、抑うつ、睡眠障害、感覚過敏といった症状を併発することもあります。

主なものをいくつか紹介します。

◆注意欠如多動症との併発
・チック症状が現れることによって、多動性や衝動性、注意の問題が顕著になり、うっかりしてしまうこと、整理整頓や物事の段取りが苦手であること、じっくりと考えて行動することが難しくなることなどがあります。

◆自閉スペクトラム症との併発
・チック症状によりイライラすることで、友だちとのトラブルが増加してしまうことがあります。また、他者の気持ちを考えない言動などが課題となることがあります。

◆限局性学習症との併発
・チック症状のため落ち着いて読めない、書字が難しくなる、といったことがおきることがあります。

◆発達性協調運動症との併発
・不器用さに加えて運動チックにより手や体が動いてしまい。微細運動、粗大運動の難しさとなることがあります。

◆強迫症との併発
・やってはいけないと思えば思うほどやってしまう【汚言症など】。チック症状と強迫症状との区別がつきにくい場合があります。

◆怒り発作との併発
・突然「キレる」といった状態になり、体をふるわせて大声で叫んだり、手当たりしだいに物を投げたりします。ささいなことがきっかけだったりし、周囲の人は怒った理由が分からないことがあります。

併発する症状はひとつとは限らず、複数の症状が併発することがあります。



参考文献
金生由紀子編(2017)『こころの科学194 チックとトゥレット症』日本評論社
NPO法人日本トゥレット協会(2018)『チック・トゥレット症ハンドブック -正しい理解と支援のために-」
酒井隆成(2024)『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』扶桑社

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学) 公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。