学級づくり と 授業づくり⑤~個別支援よりも、まずはユニバーサルデザイン~

  • コラムを読む

投稿日: | 更新日:

  • #青山芳文

個別支援よりも、まずはユニバーサルデザインです。

 まず大切なのは「ユニバーサルデザインの考え方」です。「特別な支援を必要とする子ども」だけを対象にする「特別な手立て」などではありません。
(ここで言う「ユニバーサルデザイン」とは、最近流行の「ユニバーサルデザイン技法(メソッド)」ではなく、「ユニバーサルデザインの考え方」だということに留意してください。)

 いわゆる発達障害のある子どもの中には、担任との「相性」が合えば落ち着いた一年、担任との「相性」が合わなければ立ち歩いたり、教室から出て行ったりして勝手なことをする一年というように、学年ごとに相当異なる様子が見られる子どもがいます。
 こうした子どもが(こうした子どもを含めて多くの子どもが)落ち着いて過ごせる学級は、「口やかましくない」「質問や指示が端的で分かりやすい」「話が長くない」「テンポよく授業を進めている」「子どもに多くの活動をさせながら授業を進めている」「教室環境が整えられている」ことなどが共通しています。こうした環境(広義)があれば、いわゆる発達障害のある子どもを含め、多くの子どもたちが安心して過ごし、見通しを持って意欲的に活動することができるのです。
 逆に、こうした環境改善が不十分なまま、一部の子どもへの個別で特別な手立てを進めても、ほとんど効果はありません。それどころか、その子も学級全体もますます不安定になっていてしまいます。
 まず必要なのは、誰もが「安心して過ごし、見通しを持って活動することができる」環境と手立てなのです。

 佐藤愼二先生(植草学園大学特別教授)は、次の言葉で整理されていました。(「通常学級の特別支援/日本文化科学社)
「特別支援の必要な子どもには“ないと困る”支援であり、どの子にも“あると便利な”支援を増やす。」
 これだけで「個別で特別な支援」の必要がなくなった子どもも少なくありません。
 個別で「特別な」支援をするとしても、そのうえで初めて有効なのです。

Share

  • Xで記事をシェアする
  • Facebookで記事をシェアする

この記事を書いた人

青山芳文

現職時代の前半は小学校の教員、後半は特別支援学校の教員。

2000年前後の「特殊教育から特別支援教育への転換」の5年間は京都府教育委員会に出向し、特別支援教育の体制づくりと発達障害概念の普及に携わる。公立学校退職後10年間、大学に勤務(2023年3月立命館大学産業社会学部退職)。