チック症・トゥレット症の理解と対応⑤~トゥレット症をどう伝えるか~

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  • #チック症・トゥレット症の理解と対応
  • #相澤雅文

チック症状についてどのようにクラスメートなどに伝えたらよいのか

1.チック症・トゥレット症をどう伝えるか

 チック症状は意思とかかわりなく現れてしまのですが、周囲からは「わざとやっている」と受け止められたり、「変なことをしている」とからかいの対象となったりすることがあります。周囲の子どもから指摘されたり、揶揄されたりすることは、本人のマイナス経験に他なりません。また教師や保護者といった周囲の大人の理解が肯定的でないならば、その子の成長発達に大きな影響を与えると考えられます。
 多感な学齢期にチック症状のために周囲の友達に偏見や好奇の目で見られることは、集団適応の困難につながる大きなリスクを背負っています。このことが原因で不登校となったり,自己肯定感が低下してしまったり,学業上の問題を示したりするケースが報告されています。
 まずは、クラスメートなどに、どのように何を伝えればチック症状への理解をすすめることができるのか保護者と教員で話し合い、本人の意向を確認して伝えることが必要です。

 チック症状について、理解してもらうための基本的なポイントとして以下のようなことがあります。

・本人がわざとやっているわけではない
・チック症状がでないようにコントロールすることは難しい
・人間関係やクラスメートの接し方が問題で起こっているのではない
・ある程度の我慢ができるために、逆に誤解を生みやすいことがある
・音声チックや運動チックの現れ方が変化する
・チック症状が強く現れたり、まったく現れなくなったりすることがある

 チック症状をコントロールすることが難しい状況に困っていることや、そうした状況の中でも学校に登校してみんなと一緒に生活し勉強したい気持ちでいることを伝えることが大切ではないかと考えています。

2. 本人の対応

 学校生活では、友達から「どうして顔をしかめるの」「なんで声が出るの」などと聞かれることがあるかもしれません。そうしたときには「これは、僕のくせなんだよ、やめようと思ってもやめられないんだ」と説明する方法がまず本人が行えることではないかと考えられています。このように説明できる練習を行っておくことも本人の安定や安心につながるのではないかと思います。

参考文献
金生由紀子編(2017)『こころの科学194 チックとトゥレット症』
日本評論社NPO法人日本トゥレット協会(2018)『チック・トゥレット症ハンドブック -正しい理解と支援のために-」
酒井隆成(2024)『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』扶桑社

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学) 公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。