チック症・トゥレット症の理解と対応③~幼児期のチック症状の理解と対応~

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  • #チック症・トゥレット症の理解と対応
  • #相澤雅文

幼児期のチック症状についての理解と対応です

1.幼児期のチック症状

 幼児期から小学校の低学年にかけてチック症状が現れることがあります。運動チックにしても音声チックにしても単純チック(チック症・トゥレット症の理解と対応①の図1を参照してください)であり、しばらくすると消失する一過性のチック症状で、様子をみているうちに軽快することが多いです。しかし、運動チックや音声チックが現れたり消えたり、違うチック症状に変化したりすることがあります。

2.チック症状への対応

 チック症状には、ドーパミンという脳内物質が関係していると考えられており、早寝早起きの睡眠を確保することなど、規則正しい生活リズムを作ることが大切とされています。また、運動量の確保や刺激の強いゲームなども時間を決めて控えることなども勧められています。

3.ご家庭での対応

 保護者の対応がとても大切です。症状に対して極度に不安になったり、やめるように叱ったりすることは逆効果です。子ども達は敏感ですから、保護者が不安になると、子どもたちも不安になってしまいます。また、いけないことをしていると思い、我慢しようする気持ちが強くなり、自分らしさが出せなくなってしまうことも心配です。

4.園との連携

 幼稚園や保育所・子ども園等での生活の中で、周囲の友達が「正しく理解して」「さりげない配慮ができる」といったことは、まだこの時期の発達段階では難しいです。 
 先生方の配慮や支援によって、園等での生活の充実感は大きく左右されます。チック症状への対応は環境、取り巻く人々の理解によって大きく異なってきます。
 幼児期は様々な面が未発達です。まずは見守ることで、その子の行動の変化を理解し適切な支援に結びつけていくことが大切です。そのため園での様子、家庭での様子を連絡し合い共有することは理解と対応を進めるために有効です。
 園での生活を楽しみ積極的に活動に参加できること、自分らしさを十分に発揮できることがこの時期の成長発達に大切なことと考えます。

参考文献
金生由紀子編(2017)『こころの科学194 チックとトゥレット症』日本評論社
NPO法人日本トゥレット協会(2018)『チック・トゥレット症ハンドブック -正しい理解と支援のために-」
酒井隆成(2024)『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』扶桑社

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学) 公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。