チック症・トゥレット症の理解と対応②~トゥレット症の経過~

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  • #チック症・トゥレット症の理解と対応
  • #相澤雅文

トゥレット症の経過について理解する

1.トゥレット症の症状の経過

 チック症状は、幼児期~学齢期の子どもに比較的よく見られるものです。金生(2017)によれば5~10人に1人がチック症状を経験するとされています。身近に関わる保護者や保育者・教師などが「おや?」と気づく程度のチック症状です。その多くは一過性のもので、本人も周囲もほとんど問題にせずいつの間にか消失してしまうという経過をたどることが多いのです。チック症状が軽い場合は本人自身すら気づいていないこともあります。当然そうしたケースでは日常生活、学校生活でも何ら支障がありません。ちょっとした「くせ」といった感じでしょうか。

 ところが、チック症状がいつまでも消えなかったり、強くなっていったりすると、学習場面や日常生活に支障が現れてきます。チック症状は軽症から重症までの連続性の中にあるといって良いのです。中でも重症とされるトゥレット症の一般的な経過は,幼児期から小学校低学年の時期に発症し,チック症状が強まったり弱まったり、増えたり減ったりを繰り返しながら10歳から15歳前後で症状のピークを迎え、その後軽快の方向に向かい、多くの方が20代には生活に支障がない程度に症状が寛解するとされています。しかし、個人差が大きく成人期になってもチック症状が治まらないケースがあります。

図1 トゥレット症チック症状の変化
(「こころの科学194チックとトゥレット症」日本評論社p31より)

参考文献
金生由紀子編(2017)『こころの科学194 チックとトゥレット症』日本評論社
NPO法人日本トゥレット協会(2018)『チック・トゥレット症ハンドブック -正しい理解と支援のために-」
酒井隆成(2024)『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』扶桑社

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学) 公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。