こころの理解を巡って~発達検査・知能検査で発達障害の有無はわかるものなのだろうか~

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1.“その人らしさ”の理解と視点と各種検査の関係性とは

一人ひとりの感じ方や考え方を理解するために,“知・情・体”という3つの視点や,発達検査・知能検査・心理検査という検査の分類の仕方を紹介してきましたが,それらの知見を照らし合わせた時,どういう風に整理することができるのでしょうか。

2.“知・情・体”のどこをそれぞれの検査は見ているのか

簡易な対応関係を図で示すとこのように整理することができるかもしれません。

3.知能検査・発達検査と発達障害のアセスメントを巡って

ここで注意してほしいのは,矢印で示した通り,脳機能・器質の障碍,すなわち発達障害の特性やそれに関する困難さのアセスメントは,“知能検査”や“発達検査”で直接的に測定しているわけではないという点です。
支援の現場では,知能検査や発達検査の検査結果を基にして,発達障害の特性の有無やその程度について議論する場面がしばしば見かけられますが,実はそうした議論は危険な行為だと考えられています。
たしかに,発達障害に由来する困難さを有する子どもや成人の多くに知能や発達にバラつきがあることは指摘されているのですが,知能や発達にバラつきがある人が皆,発達障害の困難さを抱えているとは限らないのです。
あくまでも発達障害の特性の有無やその程度を検討するためには,それらを測定する専用の“心理検査”の実施と“成育歴”の聴取が不可欠であるということを知っていてください。


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この記事を書いた人

榊原久直

京都教育大学総合教育臨床センター講師(学びサポート室担当)、臨床心理士・公認心理師

関係性の中で子どもは育つという関係発達の視点から,子どもや保護者,支援者を支援する実践と研究を行う2児の父親。