不安感と不登校・登校渋り④~不安感がフラッシュバックを引き起こす~
- #不安感と不登校、登校渋り
- #相澤雅文

目次
不登校や登校渋りの背景として、児童生徒が感じている様々な不安感が要因となっているケースがあります。
1.生徒の様子
中学校2年生の男子Dさんです。自閉スペクトラム症の診断を受けています。保護者から「うちの子が学校で何もしていないのに同級生から自転車置き場で蹴られた、もう学校に行きたくないと言っている」との電話が入りました。たまたま自転車置き場には学校の防犯カメラが設置されていたことから、事実関係を把握しようと、その様子を確認しました。すると加害者とされたEさんと出会った瞬間、Dさんから挑発的な態度やめちゃめちゃに自転車を倒すといった行動をとっていたことが分かりました。どのように理解すればよいのでしょう。
2.理解と対応の糸口
フラッシュバックという現象が知られています。また、似たような現象をタイムスリップ現象と呼ぶこともあります。その特徴を広沢(2012)は「もともと優れた記憶能力を持つ、知的に高い、しかし不安定な自閉症の症例に見られ、感情的な体験が引き金となって、過去の同様の体験が想起され、その過去の体験をあたかも現在の、もしくはつい最近の体験であるかのように扱い、その記憶体験は、健常者においては一般に想起することのできない年齢まで遡ることがある」としています。
例えば、担任(男)の先生が大きな声で他の生徒を叱ったとします。男性の大きな声を聞いた瞬間、過去に(小学校低学年の時)、男の先生から大きな声で叱られたことが想起され、「あの時、こんなことを言われて嫌だった」ことや「大きな声で、怖かった」といった、その時の怒りや恐怖の感情が蘇り湧き出てきてしまう現象がフラッシュバックと呼ばれるのです。
Dさんの事に戻りましょう。Dさんは過去にEさんとの間でからかいを受け叩かれるといったトラブルがありました。かなり嫌な経験としてDさんにインプットされたことでしょう。Eさんは別のクラスでした。DさんはEさんに出会うことにかなり強い不安を感じていたことと思います。しかし自転車置き場でばったりと出会ってしまったのです。その瞬間、過去の感情がフラッシュバックし、挑発的な態度となって現れたと考えられます。おそらくDさんの頭の中は真っ白(パニック状態)になっていたことでしょう。その時の自分が行った行動は覚えていないと話していますが、蹴られたという相手が自分にしたとは認識していたのです。
参考文献
柴山雅俊編(2012)『解離の病理―自己・世界・時代』岩崎学術出版社
※第Ⅱ部 解離と周辺病態
・高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と解離…広沢正孝
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