不安感と不登校・登校渋り②~発表・実技、学校生活に関する不安~

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  • #不安感と不登校・登校渋り
  • #相澤雅文

不登校や登校渋りの背景として、児童生徒が感じている様々な不安感が要因となっているケースがあります。

1.生徒の様子

 小学校1年生のBさん。ある日、「学校に行きたくない」と急に言い始め、登校を渋るようになりました。それまでは元気に通っていたのにどうしたのだろうと、心配しています。本人に聞いても話してくれません。先生に相談すると、授業中に間違った答えを言ってしまい、友だちから笑われたことを気にしていたようです。また、トイレに行く姿を見たことがないとも話していました。どのように理解し、対応していけば良いのでしょう。

2.理解と対応の糸口

 まず、「友だちに笑われた」ということです。学校では、授業中の発表や音読、体育の実技、グループ活動など、クラスメイトから注目される場面で緊張が高まるとともに、「上手くできなかったらかっこ悪い」「友だちから笑われる」といった不安感が生じます。

 発表や実技の際に頭の中が真っ白になってしまったり、ドキドキと動悸(どうき)がしたり、手や顔に汗をかいたり、手や声が震えてしまったりということは多くの人が経験することです。確かにそうした場面は避けたいと思いますよね。みんなの前で恥ずかしい思いをしたり、低く評価されたりすることに不安を感じるのです。友だちや教師からの評価に対して、自分のプライドを守ろうとする自己防衛の心理が働くこともその要因でしょう。「教室は間違えるところ」という学級風土の醸成や、グループワークを行っての発表で責任を自分自身にだけ向けない工夫、「わたしは決して、失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ」というエジソンの言葉も良いと思うのですけれども。

 他にも、学校生活に関連した不安の要素として、幾つかの典型的なパターンを紹介します。まずは「トイレに行く姿を見たことがない」です。学校のトイレに対しての不安感のある子どもは比較的多いと言われています。清潔さへの過度なこだわりや、臭いへの過敏さ、他者に排泄音を聞かれ揶揄されるかもしれないといったことへの不安などから生じると考えられています。大便用が家庭では洋式であるのに、学校では和式であったりすることも要因となることがあります。Bさんはどうでしょう。清潔さでしょうか、臭いでしょうか。お話しを聞いてみることから始めないといけないかもしれません。必ず理由があるはずですから。

 他には、給食の不安ということもあります。味覚や嗅覚の過敏性があり「給食の味付け」や「家庭の食事との臭いの違い」から、食事中に吐いてしまうかもしれないという不安感が生じることがあります。

 こうした不安への対応として、最初は回避するための行動から始まります。トイレの場合、「学校ではトイレに行かないように水分を控える」ことから始まります。学年が進み、授業時間が長くなると「学校に行くこと自体を避ける」という思考に変化していくことがあります。



 様々な不安があり、それが嵩じて不登校の要因となることがあります。初めは局所的な不安に対する回避行動が、徐々に学校生活全般への回避へと進展し、不登校に至るケースがあるのですね。

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学) 公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。