発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑳「先生、みんなに伝えて」 託された言葉、今も心に~
- #小谷裕実
- #発達でこぼこ、一緒に歩こう!
「発達でこぼこ」の子どもを理解し、対応するには、当たり前だと思い込んでいるルールや一般常識を疑うことが必要です。でこぼこのある子どもへの理解や対応を求める上で「壁」となるもの。それは周囲の大人の経験則に固執するかたくなさ、前例がないからと変更や調整を嫌う態度です。こうした環境を変えるのが、実は一番の難題です。
およそ20年前、学校の管理職の先生を対象とした研修会で、発達障害の子どもの話をしました。参加後のアンケートに「講演者は教育現場を知らない人のようだ。うちの小学校には、そんな子どもは一人もいない」と書かれていたことが思い出されます。その直後、「知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒」が6・3%との、2002年の文部科学省による調査の結果が分かり、衝撃が走りました。通常の学級に在籍する「でこぼこ」の子どもの割合でした。これが22年の調査では8・8%まで増えました。教育現場だけでなく職場や家庭、社会でも基本的な知識や理解、対応を求められる時代です。
一方で、子どもに起こる問題の原因を、取りあえず発達障害に求めようとする風潮にも警鐘を鳴らす必要があるでしょう。例えば、学校の研修会で「児童生徒間の関係のこじれ」「不規則な生活態度」「親子関係の問題」などの解決策を求められることがあります。むしろ学校の先生やスクールカウンセラーが専門でしょうし、地域社会や経済などの課題と絡み合うのならば、スクールソーシャルワーカーが適任だと思います。
学校で起こる子どもの課題は担任が抱え込むのではなく、学校が一丸となって取り組む姿勢が必須です。その上で、スクールカウンセラーなどさまざまな職種の方と連携する「チーム学校」で対応するのです。誰かに相談することの上手な子ども、先生、学校、保護者であってください。そうすれば孤立せず、解決策が見いだせるはずです。
ある発達でこぼこの子のお父さんが、「先生、お願いやから有名になってみんなに伝えてくれ。わしがいくら言うても、誰も聞いてくれへんねん」と、ある日、肩を落としてぽつりとつぶやかれた言葉が今も心に残っています。お父さんの期待には応えられていませんが、親御さんの声、子どもたちの声、学校の先生の声を、これからも伝えていきたいと思います。
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