発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑱高い能力、伸ばす配慮も 米国のギフテッド教育現場を視察~

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ギフテッドと呼ばれる子どもたちの教育への対応は、まだ日本で着手されていません。2024年8月に米国のギフテッド教育を行う学校を訪問し、現場の視察で感じたことをまとめました。

「発達でこぼこ」のある子どもが、自然科学やコンピューターのプログラミング、芸術、読み書き、記憶力など特定の分野で突出した力を持つことがあります。「でこ」「ぼこ」の両方に配慮した子育てや学校教育は案外難しいものです。学習の内容が自分の関心や能力にぴったりなら面白いでしょうが、レベルが低すぎても高すぎても勉強はつらくなり、興味を抱けなくなります。集団生活が苦手で、感情をうまくコントロールできないことも少なくないので、学校に行きづらく、不登校になることも。保護者も子育てに悩みを抱くでしょう。

このような子どものことを英語で「ギフテッド」と呼ぶことがあります。これは診断名ではありませんし、定義もありません。また「でこ」「ぼこ」の両方に特別な配慮を要する子どもを「2E」と表すこともあります。二重に特別という意味の英語に由来する言葉です。2E教育は、日本では調査や研究が始まったばかりです。

2024年夏、米国イリノイ州で「ギフテッド」教育を行う三つの私立学校を視察しました。20~350人程度の小中規模校です。公立学校への適応が難しい子どもを率先して受け入れるところもあれば、2Eには対応できないというところも。校名に「ギフテッド」を付ける学校も、使わないという学校もありました。子どもの高い能力に合わせた教育を提供するという予想どおりの共通点がありましたが、意外な共通点もありました。

①突出した才能を持っていてもまだ心は成長過程にあると認識。特に感情や気分の「気付き」、コントロールを重視して時間を割いている。②机や椅子、文具のサイズや素材などを、子どもの体や感覚に合わせて選んでいる。③感覚過敏や物事に集中できない「不注意」の子が用いるイヤーマフ(耳当て)、ついたてをどっさり備えるなど配慮が行き届いている。  ④自尊感情を高める標語をあちらこちらに張り出している。いずれも、発達障害への配慮として重要な4点であり、「でこ」「ぼこ」の両方に配慮されていることがよく分かりました。

「すばらしい子どもたち」+「保護者と共に」+「教師の積極性」=「すばらしい結果」 ある学校の先生のTシャツに書かれていた言葉です。洋の東西、才能の有無にかかわらず、子どもたちの輝かしい未来に不可欠な言葉ですね。

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この記事を書いた人

小谷裕実

京都教育大学教授・学びサポート室長、博士(医学)、小児神経専門医

総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。