発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑰学校の先生、大学で学ぶ―課題解決の意欲胸に~
- #小谷裕実
- #発達でこぼこ、一緒に歩こう!
教員養成を担う大学では学校の先生になりたい学部生に加え、現職の教員にも教育を行います。学校現場で一定の経験を積んで問題意識を持ち、立ち止まって学び直したいという人たちです。この意欲に満ちた働き盛りの教員が大学院(2年間)や専攻科(1年間)を受験し、入学します。広い教室の前や真ん中の席に座り、教員の説明や発問に対しても真剣にうなずいて、質問をしたり発言したりと意欲的な存在です。
もう一つ、うれしいのが、現場で抱いた課題解決への意識を胸に秘めていること。私たち大学教員と共に、研究課題として解決の道を探ろうとする姿勢があり、その成果は論文にまとめられます。振り返ると、私自身も多くの教員のゼミ指導を通して、学校現場のリアルを深く学ぶ機会を得てきました。
大石先生(仮名)は、高校普通科の理科のベテラン教師です。多くの「発達でこぼこ」の生徒の存在に気付いていたのに、日々の業務に追われて、特別な知識や技術もないまま対応したことを悔やんできたそうです。「そのような生徒たちが卒業後にどのような道を歩んでいるのか」「最新の知識や教育技術とは」「自分と同じように悩んでいる教員が多いのではないか」。それが大石先生の課題意識でした。小学校の担任を長年務めた小畑先生(仮名)は、2年前から特別支援学級の担任です。通常学級とは異なる視点で一人一人の「でこぼこ」を細かく見て指導し、保護者を支援することの大切さに気付いたものの、方法を全く知らない自分に無力感を感じたそうです。町田先生(仮名)は特別支援学校で教えてきました。3年前、地域支援チームに異動して、公立の小中学校の通常学級の先生にアドバイスすることになりました。教育環境を診断し担任を元気づける役割ですが、通常学級での困り事が実感しにくかったそうです。
私たち大学教員の仕事は、それぞれの先生の課題意識を丁寧に聞きとり、研究の方法や手順をどうしたらいいか導くことです。そして、どの先生方も大人の底力を発揮してすばらしい論文を仕上げられたことは言うまでもありません。
教える立場から学ぶ立場へ。発達でこぼこの子どもの存在が先生を突き動かしているのですね。自分の限界を知り、立場の違う人や他職種と交流する場に身を置いて視野を広げること。年齢を重ねても、そんな勇気ある一歩を私も大切にしたいです。
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