楽しい活動を通じた発達支援 ~読み書き支援としての“あいうえお表づくり”~

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  • #楽しい活動を通じた発達支援
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1. 楽しい活動を通じた発達支援を目指して

発達支援や療育活動、特別支援などの言葉から、皆さんはどのような活動をイメージされますか。子どもたちの苦手さに対して、なにか“特訓する”・“訓練する”といった修行のような活動を思い浮かべる人は少なくないかもしれません。また、実際にそのような取り組みがあり、それが子どもたちの能力の向上に寄与することもあるのですが、子どもたちの興味関心や意欲をセットで伸ばしてあげたい時には、できるだけ“楽しい”活動を通じて支援ができるに越したことはないのではないでしょうか。

2.「読み」の困難さを抱える子どもへの支援を考える

「就学を巡る保護者の不安~読み書きがまだできないんです~」の記事にて、子どもがひらがなの読み書きをするという行動を巡って、特に「読む」という行動には以下のような行動や能力、心の動きが含まれているということを紹介しました。

<読む活動>
 ・絵や文字など(絵)本そのものへの興味関心があること
 ・(座って読む場合は)座位で姿勢を保持する力
 ・本を支える手指の動き
 ・ページをめくる手指の動き
 ・絵から状況を読み取る力
 ・文字の形を識別する力
 ・文字と音をマッチングする力
 ・文字(単語)とその意味をイメージする力
 ・物語のストーリーを理解する力
 ・登場人物の心の動きを理解する力

これらの中で、おそらくひらがなを「読む」という行為の土台となるような部分として、「・絵や文字など(絵)本そのものへの興味関心があること」を育むことができるような活動の経験を積むことの必要性について考えていきたいと思います。
私たちが子どもの頃、文字を「読む」ということを学ぶ前に、そこに繋がりうるようなどんな遊びをしていたでしょうか。そこには「文字とイメージが繋がる楽しさ」があったのではないでしょうか。ここでは特に、「読む」ことへの興味や自信がまだ十分に育っていない子どもたちへの支援を紹介します。

3. 読み書き支援としての“あいうえお表づくり”

「読む」ことへの興味や自信が低い子どもたちに、文字や本を読まそうとしても否定的な反応が返ってくることが多いと思います。読み始めても、文字と音とが上手く理解できずに苦しんだり、読めたとしても読むだけで必死で中身にまで意識が回らなかったりして、とてもではないけれども楽しめないという状態になり、その結果、読むことを巡る経験値が増えず、読むことへの興味や自信がいつまでも伸びない…という悪循環に入ることがあります。

そんな時には、まずは“文字とイメージが繋がる楽しさ”を感じられるような活動やアイテムが役に立ちます。皆さんは子どもの頃に「あいうえお表」と呼ばれる50音とそれに対応するイラストが描かれたプリントを見たことがありますか。実は現代では、PCとインターネットを活用することで、簡単に自分好みのあいうえお表を作成することが可能な時代になっています。  やり方は簡単です。①PCでExcelを起動し、マス目に50音を1文字ずつ入力していきましょう。その際、文字の下か横にイラストとその名前を入れられるカラの列か行を2つずつ用意しておきましょう。(※インターネットで検索すると、既にひらがなやカタカナのあいうえお表のひな型となるデータが掲載されているサイトにたどり着くこともできます)そして、②子どもの興味関心のあるイラストを画像検索で探し、50音の傍に1つずつ貼り付けていきます。③より文字に意識を向けるように、イラストの名前や読みを添えます。④作成したオリジナルのあいうえお表を印刷し、クリアファイルに入れたりラミネート加工して完成です。

<我が家のあいうえお表(カタカナ バージョン1&2)>

4. 遊びをより盛り上げ、経験値を増やすための工夫

この遊びの良い所は、文字そのものにまだ関心がない子どもたちに対して、子どもの興味関心のあるイラストを活用することで楽しく文字を意識する機会を提供する点にあります。また、イラストに何を使うかは無限に選択肢があるため、子どもの興味関心やその移り変わりに合わせて作り直すことで、飽きることを防ぐことが可能になります。そして、出来上がったあいうえお表を活用して、文字に親しむような遊びに発展することができれば、より一層、文字を意識して文字と音を照らし合わせて考えたり、文字の形を意識する機会を得ることが可能になります。

以下に、あいうえお表使った遊びの一例を紹介させていただきます。

<工夫の例>

・あいうえお表を見ながら「しりとり遊び」をすること…あいうえお表を“使う”機会になるともに、しりとりという50音を意識した遊びに親しむ機会にもなる
・あいうえお表を作成する際に、イラスト探しを子どもと一緒に考えること…50音の1音1音を意識し、それら始まる単語を考える機会になる

こうした遊びを通じて、読むことや文字そのものへの自信や意欲を高めることができ、「わかる!」、「知ってる!」、「読める!」という楽しさを子どもが求めるようになっていくという良い循環が生まれるきっかけを作ることができるかもしれません。 人間だれしも、“わかる”ようになることは知的好奇心をくすぐる楽しい瞬間であるため、こうした遊びを通じて楽しく文字に親しむ機会を提供することが、子どもの発達を支えることに他ならないのです。

<好きなイラストに興味をもってやってきた妹>

関連資料
関連記事「就学を巡る保護者の不安~読み書きがまだできないんです~」や「楽しい活動を通じた発達支援~読み書き支援としての〇〇~」シリーズもご参照ください

筆者紹介
榊原久直 臨床心理士・公認心理師 京都教育大学 学びサポート室 講師
関係性の中で子どもは育つという関係発達の視点から、子どもや保護者、支援者を支援する実践と研究を行う2児の父親。

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