発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑭ 人を好きになるのはすてき 大人の階段上っていく

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

人を好きになるって、すてきなことです。お母さんが好き、お父さんが好き、きょうだいが好き、おじさん、おばさんが好き、担任の先生が好き、保健室の先生が好き、友だちが好き、彼や彼女が好き、いろいろな好きがあります。

 人を好きになると、子どもたちは元気100倍です。頼りにしている友だちや大好きな先生がいれば、学校への足取りも軽くなります。多少の困ったことや不安も打ち消され、果敢に挑戦しようとし、失敗した後の立ち直りも早いもの。

 人との関係性を築くのが不得意で一人を好むこともある「発達でこぼこ」の子どもたち。好きが芽生えると、外来での近況報告が楽しみです。

 とはいえ、友だち以上の「好き」には親や担任の心はざわつくことも。性教育への苦手意識を拭えませんが、子どもたちは必ず大人への階段を上ります。お互いを尊重することの大切さ、相手の気持ちを読み取るためのノウハウ、親しさを深めるステップ。年齢や発達段階、でこぼこの様子に応じて、具体的で適切な情報をにこやかに穏やかに伝えたいものです。

 小学6年生のMさんはK子先生が大好きで「将来は結婚して、一緒に家族になりたい」とお母さんに真顔で伝えます。ラブレターも準備万全。お母さんは笑ったり否定したりせず、担任の先生とも連携して「家族になること」「相手の気持ちを大切にすること」、そして性教育にも少し触れながら、丁寧に対応してくれました。

 中学生になったNさんは「彼女ができた」と、こっそりお父さんに報告します。子育てに悩みぬいたご家族は喜びを隠せません。彼女を通して自分を見つめることで、自分中心の行動や考えが変わっていくという大変化を感じてのことです。

 高校生のPさんは、2人の「好き」の質や熱量の違いに気づかないまま、交流サイト(SNS)での相手の熱烈なアタックをかわせず、夜眠れなくなりました。最後は家族の力を借りて、相手を傷つけずに距離を置くことができました。

 大学生なら、恋人との旅行の報告や誰かと暮らしたいといった相談。社会人では、婚活や結婚生活の相談も受けるようになります。

 「大切にされていると感じるか」「考え方や感じ方、行動や感覚の特徴など自分の特性を把握しているか」「それを伝えてもいいなと思えるほど大切な人か」「相談に乗り、寄り添ってくれる身近な人が他にいるか」  長期にわたる良好な関係を願って私が確認する4カ条です。

筆者紹介
小谷裕実 博士(医学)、小児神経専門医、京都教育大学教授。総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。

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