発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑮ 目いっぱい楽しみ成長実感 20人の子どもと学外授業~

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

忘れられない大学での授業があります。今から20年ほど前に行った学外授業です。「発達でこぼこ」の子ども20人を募集し、京都教育大の学生十数人と京都YMCAのスタッフで活動しました。体力と気力をフルに使い、2カ月に1回、子どもたちを屋外に連れ出して、目いっぱい楽しみました。  応募の際の調査票で子どもの特徴を把握した上で、活動内容は学生中心で決めます。全員が一斉に行動するのではなく、小グループに分けて、それぞれに担当の学生が付くのです。さまざまな事態を想定し、あらゆる策を事前に練ります。  

移動は貸し切りバスか公共交通機関で、行き先は山や川、洞窟やテーマパーク。茶摘みやたこ揚げ、調理、合宿と本当に充実した内容でした。  
活動内容が決まると、子ども用と保護者用の行程表を作って郵送し、前日には学生から「担当の小谷です。一緒にお茶摘みしましょうね」などと電話しておきます。事前に見通しを持ってもらうことで、不安を軽くしようという配慮です。  
保護者と入念に打ち合わせて薬の服用やアレルギー、苦手な食材、行動の特徴といった必要な情報を聞きます。困った時の「お助けグッズ」や対処方法も大切です。  

スタッフと学生は朝7時半に集合し、活動の再確認を行います。子どもは9時集合。出発式では約束やスケジュールを書いた大きな模造紙を確認します。「しゅっぱーつ、しんこう!」。期待と不安の交じった表情の保護者に、子どもたちは元気に手を振ります。  
夕方4時。解散式では首にメダルをかけて、子どもを表彰します。担当学生から日中の様子を聞く保護者と本人のうれしそうな表情を見ると、疲れが吹っ飛びます。  
反省会後の解散は夜7時。ただの一度も雨に降られなかったことは、ひそかな自慢です。ハードで濃密な授業を通して、教員を目指す学生たちが成長する姿は印象的でした。  

学生たちは子ども一人一人の気持ちを推し量ろうとします。予想外の行動にも臨機応変に対応しようと試行錯誤します。成功体験を積んでもらおうと、子どもの良かった点を見つけます。
学校でうまく適応できない発達でこぼこの子どもと時間や経験を共有し、晴れて教員になった時には楽しい学級を作ってほしい。そんな願いを込めた大学の授業でした。  
活動では「先生」はご法度。互いにニックネームで呼び合います。私は「ミルキー」。懐かしい思い出です。

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この記事を書いた人

小谷裕実

京都教育大学教授・学びサポート室長、博士(医学)、小児神経専門医

総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。