発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑯ 子どもに触れる感動が励み 特別支援教育、未来担う~

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

私が働く教員養成系大学の発達障害教育専攻には、「小学校(中学校)や特別支援学校で特別支援教育を担う教員になりたい」という強い意志を持つ学生が多く来てくれます。  1回生から教育現場で見学し、2回生で1週間、特別支援学校での観察実習に行きます。緊張していた学生が子どもたちの柔らかさ、自然さ、優しさに触れて自分を取り戻し、自信を付けていきます。うまく言葉を紡げない子どもに「せんせい!」と声をかけてもらえた学生は「覚えていてくれました。感激です!」と、本当にうれしそう。  

3回生になると、小学校(中学校)教諭免許の取得に向けた小中学校での実習に加え、さらに特別支援学校教諭免許状を目指して特別支援学校でも実習に入ります。学んだ知識は案外通用しないもので、体力と気力、観察力を生かして臨機応変に乗り切るのです。  
3回生の後期にゼミが始まり、1年半は卒業論文に取りかかります。アンケートやインタビュー調査、文献調査など方法はいろいろ。直接子どもを指導して変化を捉えるといった方法もありました。いくつか紹介させてください。

Xさん。「これをしなさい」の一斉指示が極端に苦手でみんなと同じ行動をとれないAさんに、学校の休み時間を利用して存分にリラックスできる環境を準備し、その後の行動がどう変わるのかを調べました。  

Yさん。学校に足が向かないBさんと野球盤で遊んで信頼関係をつくり、大きな野球盤を学校の別室に持ち込んで1年がかりで登校を定着させ、学校の先生にバトンを渡してくれました。  

Zさん。英語が壊滅的に苦手な中学生3人を放課後に集め、アルファベットを書くのにどの教材が一番適しているかをあれこれ考えました。  

Qさんは、他人との自然な会話が苦手で一方的に話してしまうCさんの家庭教師となり、自宅に通って自然な会話の練習をしてくれました。  

Rさんは、漢字が苦手なDさんにドリル学習に加えてオリジナルの絵描き歌を作り、どちらが覚えやすいか比べました。  

Sさんはコロナ禍の中、紙芝居に仕立てたオンライン教材を使ってソーシャルスキルトレーニングに取り組みました。  

真剣に取り組む学生に応える「発達でこぼこ」の子ども。親御さんたちは、未来の教員の育成に温かく手を差し伸べてくださいました。特別支援教育の人材育成を通して、たくさんの「信頼」を味わいました。

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この記事を書いた人

小谷裕実

京都教育大学教授・学びサポート室長、博士(医学)、小児神経専門医

総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。