忘れ物が多いのだけれど…

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  • #丸山啓史

学校に持ってくるべき物をよく忘れてくる子、いますよね。どうしたものでしょうか。
忘れ物をせずにすむような工夫を考えてみてもよいのですが、ここでは別の方法を考えてみたいと思います。

第一は、「忘れ物」が大きな問題にならないようにすることです。先生が子どもを厳しく叱責すると、「たかが忘れ物」なのに、子どもがひどくつらい思いをしそうです。忘れ物をして、ただでさえ肩身が狭かったり、恥ずかしかったり、不便だったりするかもしれないのに、そのうえ先生に叱られるとなれば、ふんだりけったりです。
それに、先生からの強い注意が予想されると、子どもの側から「忘れました」と申し出ることも難しくなりかねません。
大人だって、何かを忘れるときはありますよね。おおらかに構えてみましょう。「忘れても、何とかなる」という安心感がもてることも、子どもたちにとって大切なことではないでしょうか。「忘れたので、貸してください」「忘れたので、いっしょに使わせてください」というように、状況に応じて困りごとを解決していく練習になるのだと考えると、「忘れ物」はよい機会かもしれません。

第二は、家から学校に持っていく物をなるべく減らすことです。これには、二つの方法があります。
一つは、いわゆる「置き勉」です。学校で使う物を学校に置いていれば、家から持っていくのを忘れることはありません。文部科学省も、2018年に、学校での「置き勉」を認める通知を出しています。教科書等を置いておく場所の問題などもありますが、重たい荷物が子どもの負担になることを考えても、「置き勉」の推進を考えてみてよいのではないでしょうか。
もう一つは、学校で使う物をなるべく学校の備品にしていくことです。そもそも日本国憲法第26条でも「義務教育は、これを無償とする」とされているわけですから、いろいろな物品を家から学校に持参することは、憲法違反にあたる疑いが濃厚です。家計の圧迫を避けるためにも、義務教育に必要な物は学校の側が用意するというのが原則であるべきです。彫刻刀が図工室に用意されていれば、彫刻刀が子どもの「忘れ物」になることはありません。

筆者紹介
丸山啓史 京都教育大学 発達障害学科 准教授
我が家の子どもは、小学校1年生のとき、週に4回も筆箱を忘れたことがあります。

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