発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑬学級の雰囲気なじめない 主治医の学校の連携で~

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  • #小谷裕実
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不登校の子の足が学校に向かない理由は何でしょう。2022年度の文部科学省の報告では、最も多いのは「無気力・不安」で小中高校の40~50%、「生活リズムの乱れ・あそび・非行」が同じく十数%でした。なぜ無気力・不安になったのか、生活リズムが崩れたのか。その要因をさらに探る必要があります。

みちこさん(仮名)は中学生の時、きょうだいが発達障害で病院に通うのを見て「実は自分もつらかった」と親に打ち明け、病院で診察を受けてADHD(注意欠如多動症)と分かりました。中学校まで目立ったトラブルはなかったのですが、高校では学級の雰囲気になじめないと言い、いつも浮かない表情です。
クラブ活動には話せる友だちもいて高校には通えていましたが、2年生になると夜は眠れず、朝はおなかや頭も痛くなり、生活リズムは崩れてしまいました。「生活リズムの乱れ」「無気力・不安」といっても、いろいろな事情があるのです。
高校は、授業に参加できなければ欠席となり、試験を受けなければ単位は取れません。そして、進級が危うくなります。みちこさんは補習などで何とか3年生になったものの状況は変わらず、大学受験が刻々と迫ります。学ぶ意欲は強く、将来の夢も明確なのですが、結局、卒業は黄信号のまま先に大学に合格しました。

みちこさんは快活で、発達障害で困っている、配慮が必要な生徒には見えないかもしれません。しかし、学級の雰囲気がつらい理由を言葉で説明することは彼女には難しく、それを相談できる信頼関係を学校の先生との間に築くこともできなかったのだと思います。
「学級の雰囲気になじめない」という子どもの訴えは、直接教室に出向くことができない主治医にとっては厄介な難題です。
こんなときは、保護者の了解を得て「先生と面談する」「電話や手紙で情報交換を行う」などの対応で解決の糸口を探ります。学校に心のよりどころとなれる人はいないか、雰囲気を変える手だてはないか―。手探りの遠隔支援、トライ&エラーの繰り返しです。私の経験では、学校内でキーパーソンを発見できれば、問題解決の糸口になります。

さて、みちこさん。現在は望んだ大学に無事進学し、生き生きと過ごしています。毎日快眠で、体はどこも痛くないそうです。将来は医療関係の資格を取得して「一緒に病院で働こう」が、今の私たちの合言葉です。

筆者紹介
小谷裕実 博士(医学)、小児神経専門医、京都教育大学教授。総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。

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