イングランドのギフテッド教育②

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  • #イングランドのギフテッド教育
  • #伊藤駿

はじめに

イングランドのギフテッド教育①では、イングランドにおけるギフテッド教育の経緯をご紹介してきました。現在の日本と同じように、ギフテッドに対する明確な定義づけは行われない中で、かれらのための教育が模索されてきたことがうかがえます。今回はそうした中で中心的に行われてきた4つの取り組みを紹介します。紹介にあたっては、関連情報にある植田みどり氏と杉本均氏の論考を参考に作成しています。

社会経済的に不利益を被っている都市部の地域に対する“Excellence in Cities”

Excellence in Citiesとは指定された都市のうち、恵まれない地域の子どもへの教育・学習の支援を行うためのプロジェクトを立ち上げた学校へ補助金を支給するプログラムです。合計で59の地区が指定され、ロンドンをはじめとする大都市とその近郊が中心でした。
具体的に提供されたカリキュラムとしては、「才能児」に対する特別な授業・学習プログラム、すべての指定学校への才能教育コーディネーターの養成と配置、学校外における学習支援機関プログラムなどが挙げられます。また才能教育の形態としては、既存の科目からより広いトピックを学習するエンリッチメント、既存の科目をより深く学ぶエクステンション、特定の科目において卓越した成績を収めた生徒が1つ上の学年に移動して学習するアクセラレーション、そして才能教育のために不足している基礎的技能の時間の増加が挙げられます。

すべての公費維持学校を対象とした才能教育

上記の指定をされていない学校においても、特定の教科における一部の子どもを対象にした集中コース(マスターコース)や夏休み中に1〜2週間特定のテーマに基づいて専門家の指導に基づいて行われる学習等(サマースクール)、大学と協力して行われる才能教育アカデミーなどが展開されています。イングランドにおいては、すべての学校において濃淡はあれども様々な才能教育が行われていたのです。

才能教育のカリキュラム開発

ギフテッドの子どもたちにとって、既存のカリキュラムではそのニーズが満たされないことが考えられます。イングランドにおいては、既存のカリキュラムを否定するのではなく、カリキュラムを付加して対応していました。

才能教育における教員養成と研修

まず教員に対しては、才能の概念、才能児の識別、才能教育の取り組みに関する基本的枠組み等の包括的研修アプローチが取られていました。また学校や地域での才能教育を指導し、支援する立場として才能教育コーディネーターの育成にも取り組みました。ただし、このコーディネーターの多くは兼務となっていました。

以上、イングランドの才能教育について、その特徴を4つに分けて説明してきました。次はこの4つが展開されたあとに開発された、ギフテッドの子どもたちむけに開発されたプログラムについて紹介します。

関連資料
植田みどり(2018):イギリスの才能教育.山内乾史編,才能教育の国際比較.東信堂,pp.31-47.
杉本均(2005):英国における才能教育の動向 : レディング・スクールの事例より.京都大学大学院教育学研究科紀要.pp.18-20.

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