イングランドのギフテッド教育①

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  • #イングランドのギフテッド教育
  • #伊藤駿

はじめに

イングランドは英国(United Kingdom)を構成する1地域です。植田(2018)によれば、英国においては才能のある子どもの教育はエリートを養成するためにかねてより積極的に取り組まれてきました。別稿でもご紹介しますが、イングランドでは現在ギフテッドの子どもたちに焦点化されて行われてきた支援は廃止されています。しかし、日本に先んじて、このギフテッドの子どもたちへの支援を推進してきたイングランドの事例を知ることは、今後の日本での支援を考えていく上でも有用なものになると考えられます。今回は3回に分けて、イングランドにおけるギフテッド支援を紹介していきます。

ギフテッド教育の経緯

イングランドはブレア政権以降“gifted and talented education”と呼ばれ、学術的に高い能力や可能性をもつ子ども(gifted)とスポーツや芸術における高い能力や可能性をもつ子ども(talented)を対象とした教育を行ってきました。また、こうした子どもたちは特定の地域に偏在するのではなく、各学校で一定の割合で在籍しているという想定がなされていました。そのため子どもの選定基準もいわゆる学力テストに限らず、教員や保護者からの情報といった総合的な判断によっていました(Cullen et al.2018)。言い換えればギフテッドの子どもたちの定義についてもコンセンサスは得られていなかったといえます。実際にギフテッドの子どもたちの割合や人数の定義に関する記述をみると、2015年の学校監査報告書によれば「Key Stage 2終了時に英語(リーディングとライティング)および数学でレベル5以上を獲得し、Year 7で中等教育機関に入学すること。」と教育省は述べている一方で、イングランドにおいてギフテッドの子ども・若者向けのプログラムを委託されることになった非営利組織「サットン・トラスト」(Sutton Trust)では「Key Stage2終了の時点での上位10%に限る」とされていました。
こうした明確な定義づけが行われない中で、イングランドにおいてはギフテッドの子どもたちに対する教育を推進し、すべての地域、すべての学校における教育水準の向上を図ることが目指されていました。植田(2018)はその具体的取組として、第一に社会経済的に不利益を被っている都市部の地域に対する“Excellence in Cities”、第二にそれ以外の学校も含めたすべての公費維持学校を対象とした才能教育、第三に才能教育に向けた教育課程の開発、第四に教員養成、教員研修の充実を挙げています。次の記事では、この4つについてご紹介します。

関連資料
植田みどり(2018):イギリスの才能教育.山内乾史編,才能教育の国際比較.東信堂,pp.31-47.
Cullen.M.S., Cullen.M., Dytham,S. and Hayden, N.(2018):Research to understand successful approaches to supporting the most academically able disadvantaged pupils.Department for Education.

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