ギフテッドの子どもたちに関する基礎知識② 〜おさえておきたい2つの特性①〜

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  • #ギフテッドの子どもたちに関する基礎知識
  • #伊藤駿

はじめに

基礎知識①では、ギフテッドの定義が非常に曖昧であることをお話ししてきました。今回は、そうした中においても共通して見られることの多い特性として、非同期発達と過興奮性があげられます。今回の記事では、そのうちの「非同期発達」について取り上げます。

3つの非同期発達

WISCをはじめとする心理検査においても、認知能力をいくつかの側面から測定しています。ギフテッドと呼ばれる子どもたちについても、認知以外の側面も含めてすべての領域で高い能力を発揮するというケースは極めて稀です。特に私たちのところに相談にいらっしゃる子どもたちのWISC(ここではWISC-Ⅳの結果を事例にします)の結果を見ると、言語理解や知覚推理においては高い数値を示す一方で、ワーキングメモリや処理速度では平均もしくはそれ以下というケースがよく見られます。ギフテッドに限らず、こうしたディスクレパンシー(指標間の差)があるということにより、日常生活や学校生活において困難を抱えるケースは少なくありません(すなわち発達障害であるということではありません)。特に全検査IQが高い人ほど、このディスクレパンシーが現れやすい傾向があり、自ずとギフテッドの子どもたちはそうした傾向が見られやすいともいえるでしょう、

またこうした非同期発達は、認知能力の内部だけで見られるわけではありません。例えば、高い認知能力と社会性の不一致も挙げられます。比較的幼い子どもで高い認知能力を有していたとしても、社会生活の経験は同年齢の子どもたちと同程度であるということはよくあります。少し難解な言葉を使えたとしても、それをいわゆるTPOに応じて使いこなすことができるとは限らないともいえるでしょう。

最後に、自分の周りとの間の発達の差も非同期発達の一つと考えられます。比較的早熟であったり、周りとの関心が異なっていたりすることが挙げられるでしょう。些細なことかもしれませんが、周りの子どもたちにとって興味深いことが自分にとってはそうではない(逆もまた然りです)ということは子ども社会の中で生きていく上では非常に苦しい状況にあることもあります。

今回はおさえておきたいギフテッドの特性の一つ、「非同期発達」を説明してきました。大切なことはこの非同期発達がすなわち困難であるというよりも、こうした特性と学校をはじめとする周囲の環境がミスマッチを起こし、困難を生じさせるということです。こうした子どもたちにどういった支援が必要かということは別稿にてお話ししてきたいと思います。

関連資料
『ギフティッド その誤診と重複診断 心理・医療・教育の現場から』 J・T ウェブら著 2019年

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