発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~⑫しんどい、学校行きたくない~

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

発達でこぼこの子どもの診療では「学校や保育所に行きしぶる」「おなかや頭が痛くなる」「朝起きられない」という相談をよく受けます。学校を休みがちの子、行かない子たちです。
「明日は行く」と約束しても、朝になると「行かない」。学校に連絡したとたん、頭やおなかの痛みが消える。食欲もあり、元気そう。親子の気持ちは微妙にずれながら揺さぶられます。行ってもしんどい、行かなくてもしんどい学校―。

発達障害の子どもには、友人関係や学習環境などへの配慮や調整が要ります。努力不足だとか怠けているとか見られて、次第に自信を失ってしまいかねません。
自分の気持ちを言葉にして、うまくSOSを発信できません。配慮されて成功した経験が乏しく、助けを求める意欲も弱いのです。「周りの期待に応えたい」「みんなと一緒でありたい」との思いが邪魔をしたり、周囲の目が気になって言い出せなかったりすることもあるでしょう。

花子さん(仮名)は、小学3年生になると家から一歩も出られなくなり、学校の先生の勧めで受診しました。名前を呼ばれてもお母さんから離れられず、ご機嫌斜めのお顔。一歩も動かず一言もしゃべりません。
初回は待合室で話を聞くだけでした。2回目、3回目と受診を重ねると次第に打ち解けてくれるようになり、4回目には一人で診察室に入ることができました。とはいえ、自閉スペクトラム症(ASD)と診断するまでにはずいぶん時間がかかりました。
学校での居場所は教室ですが、学級になじめないとどうなるでしょう。かつては、教室にいられず一日中ブランコをこいでいた子や、廊下で保護者と過ごしていた子もいました。これでは学習は進められませんし、集団の中で過ごす機会もなくなってしまいます。
こうした問題に対応しようと、教育委員会や学校は工夫してきました。教室とは別の部屋に通う「別室登校」やスクールカウンセラーとの面談などです。花子さんも別室登校を始めて家から出られるようになりました。

学校に通えなくなっても適応指導教室や民間のフリースクール、不登校特例校もあります。不登校予防策として、学校の雰囲気について子どもが無記名でアンケートに回答する「学校風土調査」を町全体で導入したり、仮想教室をインターネット上につくったりした教育委員会もあります。
しかし、不登校の子どもは約30万人と急増し、文部科学省は新しい不登校対策を取りまとめました。学校の何を変えるのか、変わると良いのか、今も模索が続いています。

筆者紹介
小谷裕実 博士(医学)、小児神経専門医、京都教育大学教授。総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。

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