キャリア発達を「性」の視点から支援する② ~誰もに「性」の学習の機会を!~

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  • #キャリア発達を「性」の視点から支援する
  • #門下祐子

現在、特別支援学校の高等部では、職業教育やキャリア教育が重視されていますが、からだのことや恋愛を含む人間関係、家族計画など「性」に関する授業は、すべての学校で実施されているとは言い難い現状にあります。
それは、「はたらく」と「性」が切り離されて考えられているからだけではなく、「性」の学びが、なんらかの問題行動が起きた際に「対処的」に、そして「個別」に行われるものだと捉えられているからかもしれません。
つまり、すべての人の権利として大切な学びとは認識されていないように思います。
なぜ、そのように認識されないのでしょうか?

一つは、教員側に「性」についての学習機会が用意されていないことが大きな要因だと考えます。
教員自身の子ども時代の性教育履修経験にも左右されることはもちろん、教員養成課程においても性教育は必修ではなく、一部の大学や教員の講義でのみ扱われるなど(本学では、「性倫理と性教育」や「ジェンダー論」の講義があります)、いわゆる「性教育ガチャ」の状態に置かれているからです。

学校現場においても研修の機会が少なく、
「何からはじめていいかわからない」
「何を伝えたらいいの?」
と戸惑う声が聞かれます。
しかしながら、筆者が行った調査や他の研究からも、
「性教育について学びたい」
「研修を受けたい」
と思っている教員が多数いることは明らかになっています。

子どもたちが学校卒業後、「はたらく」うえで、人間関係や、SNSとの付き合い方、生活のスタイル、プライベートでもパートナーや家族とどのように関係性を築いていくか、時に悩んだり迷ったりすることもあるでしょう。
だからこそ、学ぶ機会や悩みを相談する場が必要だと思いませんか?
一人ひとりがたった一度きりの人生を豊かに生きていくために、また、安定的に「はたらく」うえで大切な「性」のことを、おとなと子どもが一緒に学んだり、気軽に相談できるにはどうしたらよいか考えていきたいですね。

(キャリア発達を「性」の視点から支援する③につづく)

筆者紹介
門下祐子(京都教育大学 総合教育臨床センター 学びサポート室)
特別支援学校の元教諭で、現場で課題意識が芽生え研究の道に入る。著書に「シンプル性教育 いっしょに話そう!くらす・はたらくに活かす「性」のこと」(一般社団法人スローコミュニケーション)。

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