発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~③ママとパパに「オール5」 手だて提案、自信回復~

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

小児科医の診療は親御さん頼みです。例えばこんな具合。「高熱が出ました」(ママ)「検査の結果、インフルエンザです。薬を処方します。水分もたっぷり取らせてくださいね」(医師)。医師は保護者に診断結果を伝え、それに基づく治療について説明し、同意を得て、家庭での対応をお願いします。

これが発達障害の子どもの場合だと、保護者の様子も診療の内容も異なります。初めのうちは子育ての自信を失い、疲れて心の余裕をなくし、時に父母間の育児方針がすれ違います。きょうだいげんかや親子の折り合いの悪さが悩みになることも。
診察中でも、机に登る、質問に答えない、おもちゃを振り回す子もいます。「やめなさい。ここ病院でしょ」「先生の質問に答えなさい」。親御さんからとがった声が。子どもは一瞬動きを止めますが、注意は耳に入っておらず、すぐ同じことをくり返します。
学校でも「集団登校で友だちともめて、毎朝付き添います」「宿題をやりたがらない」「誰とも遊ぶ約束をしない」など、悩みが尽きません。学校からの電話におびえ、座布団を電話にかぶせてしまったお母さんもいました。
子どもの未来に希望を見いだせない保護者に「発達でこぼこ」の説明をすると「納得がいった」という安心と「一生続くのか」という不安とが交錯するようです。

そこで大切なのは、保護者にねぎらいの言葉をかけて、具体的な手だてを提案すること。提案がうまくいったかを後で確認する必要もあります。
提案は、例えば子どもとの接し方。具体的には声のかけ方、生活習慣の整え方、片づけ方、食事の工夫など。担任との連携方法や、通級指導教室といった活用可能なリソースについての学校との調整についても提案します。福祉サービスも大事です。子どもに応じた対処法を伝えています。
小学1年のマナちゃんは学校で給食を口にせず、ノートも取らず、教科書も開きません。1学期の目標は「教科書を開きましょう」でした。家で宿題をするのも一苦労。
伏し目がちのお母さんに三つの手だてを提案したところ、学校の事情で難しかった一つを除いて達成してくれました。
自ら子どもの環境を変えられたことへの自信からか、お母さんの声は明るく目にも力があふれていました。保護者の姿は、いつも美しいです。

補足事項

発達障害の診療は、ママとパパなくして成立しません。オール5の通信簿を差し上げたい気持ちになります。

筆者紹介

小谷裕実 博士(医学)、小児神経専門医、京都教育大学教授。総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。

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