発達でこぼこ、一緒に歩こう! ~②発達障害って何だろう? 折り合い付ける「特性」~

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  • #小谷裕実
  • #発達でこぼこ、一緒に歩こう!

発達障害は病気の名前ではありません。「発達障害者支援法」など、法律や行政で用いる言葉です。医師が診療しますが、一般の小児科や耳鼻科などとは様子が違います。聴診器を胸に当てたり、エックス線検査や血液検査をしたりすることは基本的にありません。
「友人関係をつくれずに孤立している」「授業中に立ち歩いて落ち着かない」「読み書きに長い時間がかかる」「手先が不器用で作業が苦手」
文部科学省が2022年に公表したデータによれば、通常学級では、このような「発達のでこぼこ」がある子どもが約8・8%を占めています。35人学級ならおよそ3人います。もう少し詳しく見ると、小学生10・4%、中学生5・6%、高校生2・2%。年齢が低いほど目立ちますね。

わが子に「でこぼこ」があるので、家庭や学校でいろいろと工夫したけれどもうまくいかない。最近は学校に行くのを渋るようになった―。
あれこれ試みた挙げ句に「専門の病院で相談してみよう」と考える保護者もいるでしょう。反対に「そのくらいのことで病院にまで行く必要があるのか」「障害のレッテル貼りにならないか」「そもそも病院で治すものなのか」といった意見もありそうです。
例えば、こんなふうに考えたらどうでしょうか。発達障害は治療する「病気」ではなく、その子が折り合いを付けていく「特性」なのだと。
発達にでこぼこのある子どもが大人へと成長する過程で、生きづらさや困難を抱えることもきっとあるでしょう。
私たちは、どんな支援や調整があれば歩みやすいのか、課題をやり遂げられるのかといったことをアドバイスします。
診療の基本は、保護者や子どもとの丁寧な対話です。注意欠如多動症(ADHD)では特性を和らげる薬を処方することもありますが、まずは学校の先生や保護者に処方箋を示します。学校でどんな文房具を使ったらいいか、席は前の方がいいか後ろの方がいいか。宿題の出し方、板書の仕方、休み時間の過ごし方。家庭での褒め方、叱り方のこつ。さまざまです。

「多様性を認め合い、誰一人取り残さない世の中」を合言葉に保健、教育、福祉、就労、医療の専門家が連携し、保護者と共に子どもの成長を見守るという、いっぷう変わった診療なのです。

補足事項

発達障害は、人生という山に厚く積もる雪のようなものです。雪山を登るのは大変ですが、社会が温かくなって雪が溶け、子どもが軽装で闊歩(かっぽ)できますように。

筆者

小谷裕実 博士(医学)、小児神経専門医、京都教育大学教授。総合病院で勤務ののち、障害児者施設で特別支援教育と出会い、特別支援学校教員養成と研究の道へ進む。現在は、発達障害児者に対する医療と教育の連携、社会移行支援をテーマに研究や臨床に取り組む。

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