幼児期のことばの発達

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  • #相澤雅文

個人差が大きい幼児期のことばの発達

1.ことば【初語】

幼児が最初に発する有意語を初語といいます。およそ1歳前後にみられます。初語は「マンマ」「ワンワン」などのように名詞が一般的で、一つの単語であることから、一語文とも呼ばれます。初語は「ごはん」ではなく「マンマ」など、幼児語であることが多いといえます。これは周りの大人が子どもに向けて話しかけていることばであることと、発音のしやすさなどが背景にあります(パ行やマ行、母音は発音しやすい)。

2.幼児の指さし

1歳前後で初語が現れても、すぐに語彙が増加するわけではありません。ことばの獲得には言語的な環境からの影響が大きいとされています。
初語が出る少し前から、「要求のゆびさし」と呼ばれ、自分の欲しいもの、関心のあるものを指差しして知らせるようになります。「アー」と言いながら綺麗なチョウチョを指さししたら、一緒にそのチョウチョを見て〔⇒共同注視〕、そして「チョウチョだね、きれいだね」と話しかけてみましょう。ことばの理解は十分ではありませんけれども、このようなやり取りを繰り返すこと〔⇒相互作用〕により、子どもたちはことばの示す意味を理解し、まねるようになります。
やがて、絵本などを見ていて「チョウチョはどれ?」と聞かれるとそれに応じてチョウチョを指差しして答える「可逆のゆびさし」ができるようになります。「チョウチョ」と発音することはまだ難しいのですが、意味理解はできているのですね。表出されることばが少ないと感じる場合でも、「可逆のゆびさし」を行ってみると、内言語が増えていることが実感できます。

3.二語文

2歳近くになると二語文で表現できるようになってきます。名詞の後に獲得されるのは、動詞であることが多く、「アンパンマン、きた」や「バナナ、たべる」といったように名詞と動詞を組み合わせて表現できるようになります。

4.語彙爆発

だいたい2歳半ころに「語彙爆発」といわれ、語彙が急激に増えることがみられます。3~4歳頃になると、語彙数は1500~3000までに増加し、日常的な話しことばがほぼ完成します。また、この頃には、“相手の話しを聞いて⇒自分が話す”という会話のキャッチボールができるようになります。コミュニケーションの道具としてことばを使えるようになり、自分の思いを伝える楽しさを感じるようになります。「聞いて、聞いて」と言って、自身の体験を、身近な大人に聞いてほしい気持ちを強く表すようになります。これは基本的に「子どもー大人」の一対一の関係です。やがて、遊びを通して仲間関係を活発に作り始める時期になると、同じ年齢の仲間に対しても、自身の思いや考えが伝わるように話すことの大切さに気づいてきます。それは、仲間との遊びのなかでの葛藤や思いのぶつかり合いが増え、自分と他者との違いに気づくからです。
やがて、一対多の場面で用いられることばに対応できるようになります。これは、保育者などから子ども全員に対する語りかけを、自身に対しての言葉として認識することや、子ども自身が多数を対象に語りかけることにつながります。さらには、不特定の読み手を意識する、作文などの書きことばの獲得にも関係すると考えられています。

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学総合教育臨床センター教授・同センター長、博士(教育学)、公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV

教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。