性的マイノリティに気づいた児童

  • 事例を学ぶ

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  • #相澤雅文

私たちには、生まれもった「体の性」、自分自身の性別をどう認識しているかという「心の性(性自認)」、好きになる人の性「恋愛対象(性的指向)」があるとされています。近年、その組み合わせは実に多様である事への理解が広がりつつあります。性的指向や性自認が大多数の人と異なる、性的マイノリティ(性的少数者:セクシャルマイノリティ)にあたる人々を「LGBTQ+」と表現されることも多くなりました。

1.児童の様子

一カ所に多くの人々が集まって生活する学校。プライバシーに関しても比較的オープンな環境の中で、近年LGBTQ+への理解と対応が大きな課題となっています。
小学校6年生の女児です。二泊三日の修学旅行がきっかけで欠席し、まったく学校に来なくなってしまいました。母親が、辛抱強く理由を聞いたところ、ポツリポツリと話し始めたそうです。それは次の様なことでした。
小さなころからなんとなく自分は変かなと思っていた。サッカー選手に憧れてサッカーを頑張ってきた。頭では女の子である事を理解しているけど、気持ちのうえでは自分への違和感がすごく強くなった。学校のプールの着替えやトイレに行くのが恥ずかしくてとてもつらい気持ちだった。修学旅行では一緒にお風呂に入らないといけない。自分はおかしいと思うし、罪悪感もあって自分を責めてしまう。どう伝えらたら良いかわからなかった。
勉強はしたいし、学校には行きたい。担任の先生には話して良いとの許可をもらって、話しています。とのことでした。どのように対応していけば良いのでしょう。

2.支援の方法

①まずはエンパワメントしましょう

性的マイノリティであることに気づいても、周りに話せない背景にはいろいろな事情があります。時には学校で性的マイノリティに対する否定的な情報を聞いたり、からかいの対象となっている様子を見聞きしたりすることもあるかもしれません。また、多くの人と異なる感覚である事がいけないこと、恥ずかしいことと考えてしまっているケースもあります。
そうした中で,まず自分の気持ちを素直に打ち明けられたことをしっかり受け止めましょう。「あなたの思いは、悪いことでも恥ずかしいことでもなく、あなたの思いに素直になって、あなたらしく生活していくことが大切、先生はあなたの応援者になるよ」と、エンパワメントするメッセージを伝えてほしいと思います。

②学校として受け入れ体制の検討を

性的マイノリティの方の支援については、相談を受けた先生だけではなく、管理職や養護教諭、スクールカウンセラー、学校医、時には専門家を交えてサポートチームを作り組織的に取り組むことが大切と考えます。しかし、一方で対象となる児童生徒は、可能な限り秘密にしておきたい思いがあるかもしれないことに留意をする必要があります。
まずは相談を受けた担任の先生が、学校の対応としてサポートをチームで行っていきたいということや、秘密を遵守することなどについて説明し、安心な気持ちを大切にして進めて行きたいです。

③相談の窓口、相談の機会の確保

体操服に着替える場所、保健室や多目的トイレの利用などへの思いや願いを聞き取りながら、保護者の方も交えて、具体的な配慮・対応の方策を決めていきましょう。
また、新たな要望が生まれたとき、あるいは困ったときの相談窓口や、定期的な相談の機会を作ることなども話し合って決めておきたいことです。
小学校6年生ですので、中学校への引き継ぎの仕方や、制服のことなどを話し合う機会も大切にしていきたいです。

補足事項

LGBTQ+とは、
L:レズビアン(女性だが、女性が恋愛対象となる人)
G:ゲイ(男性だが、男性が恋愛対象となる人)
B:バイセクシュアル(男性・女性どちらも恋愛対象になる人)
T:トランスジェンダー(生まれたときの性とは違う性を自認している人)
Q:クエスチョニングorクィア(自分の性のあり方が分からない、または、決めていない人)
+:プラス(LGBTQに当てはまらない、多様な性の感覚の人)
を表現しています。

筆者紹介

相澤雅文 京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学)
公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV
教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。

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