自己肯定感が低く粗暴な児童への対応

  • 事例を学ぶ

投稿日: | 更新日:

  • #相澤雅文

1.児童の様子

小学校3年生の男児です。

自己肯定感が低く「どうせ自分はみんなから嫌われているし」と投げやりな気持ちになることが多いです。集団の中では多動傾向が強まります。テンションが上がると、教室内にある作品や掃除用具を持ち出して振り回すことがあります。やめるように話すと、より激しい行動となってしまい、時には花壇の柵を壊したり、旗を破いたりなど破壊行為に及ぶことがあります。個別に対応する場面では落ち着いて過ごすことができます。走ることや水泳、本を読むことが好きです。

2.支援の方法

①学校生活のルールを身に付ける

学校生活の中で自然に習得されると考えられている、将来の社会生活に必要な集団のルールを守ると言うことが身についていないと考えられます。掃除用具を持ち出して振り回すなどの、逸脱した行為を繰り返すことによって、周囲の友だちはマイナスの心証をもっています。本人もそれを敏感に感じていると考えられます。

衝動性が高く、我慢する力である耐性が低いことで、自分の思いが先行し、周囲が見えなくなってしまう傾向が強い児童です。

個別に対応する場面では落ち着いて過ごすことができるとのことでした。学校生活の場面に対応し、他者の視点に立って物事を考えたり、場の雰囲気を読んだりするロールプレイなどを通して、どのように行動すれば良いのかについて確認することを、根気強く進めていく必要があると考えます。時にはクラスメイトと一緒に取り組み、「できた」という経験を共有していくとよいでしょう。

②他者を意識して行動する経験を重ねる

他者を意識して行動することを目的として「注文の多い料理店」(宮沢賢治作)の音読に取り組んだことがあります。「注文の多い料理店」は登場人物が少なく、主に2名の会話で物語が進行します。順番にセリフを読むということを通して、相手を意識して行動する経験をと考えたのです。台本に赤と黄色のマーカーで線を引き、それぞれのセリフが分かりやすいようにしました。自分が読んだら、相手が読み終わるまで待つ、ということさえ最初は難しかったのですが、取り組みを重ねる内に楽しみながら交互に読むことができるようになりました。本を読むことが好きであれば、こうした取り組みも良いのではないかと思います。好きなアニメを題材としても良いでしょう。上手になったらクラスで読み聞かせとして発表すると、クラスメイトの意識を変えることにつながるかもしれません。

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この記事を書いた人

相澤雅文

京都教育大学総合教育臨床センター教授・同センター長、博士(教育学)、公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV