感情のコントロールが難しい生徒

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  • #相澤雅文

教師や養育者、友だちに対して暴言を吐いたり、時には暴力を振るったり、わざと困らせることをしたり、神経を逆撫でするような言動を行うなど、反抗的で対応に困るケースが学校等で報告されることがあります。

1.生徒の様子

 中学校1年生の男子です。立ち歩きなど学習への参加が難しいことが多く、学習に取り組ませようとすると、「うっせぇ」や「だまれ」などの攻撃的な言動があります。学習場面で突然怒りだしてノートを破いたり、鉛筆を折ったりすることがあります。友だちに対しては優しい一面があるのですが、体育の球技でミスをしたり、自分の思い通りに話し合いが進まなかったりすると、友だちを責めるということがあります。担任という立場で注意することが最近多くなりました。注意をすると関係が一層悪くなるようにも思います。彼自身は、いけないことをしているという認識があります。どのような対応を行っていけばよいのか悩んでいます。

2.支援の方法

①私たちの感情について

 「人間は感情の動物である」と言われます。また「人間は社会的動物である」とも言われます。私たちは豊かな感情を表出したり、受容したりして共に生きています。私たちの感情として「喜・怒・哀・楽」があげられます。この他に、驚き・恐怖・嫌悪・諦め・快・不快・幸福感・愛情・嫉妬など、多様な感情があり、複雑に交錯しています。
 「怒り」などのネガティブな感情が現れるのは、自身の危険な状態を知らせるサインだとされています。例えば、近くに大きな犬がいれば、恐いという感情が現れますし、戦争になれば不安という感情が表れます。
 ネガティブな感情を否定せず、受け入れた上で、ポジティブな感情へと変容するためにどのようなことを行えば良いのかを考えることが大切です。

②第一次感情(怒りの裏に隠れている感情)と第二次感情(怒りとして表面化する感情)

 第一次感情とは、日々の生活で感じるネガティブな感情(不安や恐怖、悲しみ、さみしさ、疲れ、つらさ、孤独、焦りなど)のことです。一般的にはマイナスと受け止められる感情で、誰もが抱く感情でもあります。第一次感情の影響を受け、「怒り」が目に見える形で第二次感情として表面化します。「怒り」という感情の裏に第一次感情が隠れて存在していることになります。従って、第二次感情である「怒り」の表出は第一次感情のあり方に影響を受けることになります。第一次感情が押さえられなくなった時、点火スイッチが押され、「怒り」の炎が燃え上がるのですね。

③自分の怒りを認識する

 先生は「いけないことをしているという認識がある」と話していました。自分の「怒り」の感情がどのような場面で湧き上がってくるのかについて、本人も交え話し合い第一次感情の整理をしていくことがひとつの方法と考えます(状況によっては記録してみることも有効かと思います)。第一次感情からポジティブな感情への変容は、自分で感情をコントロールできた実感や、自身の良さに気づいていくことがポイントになります。先生が生徒の気づきや感じたことを真剣に受け止め、言葉に耳を傾けるとともに、生徒の良い側面を認め、励ましていくことで相互の信頼関係が強められ、変容が促されると考えます。

筆者紹介

相澤雅文 京都教育大学 総合教育臨床センター 教授・博士(教育学)
公認心理師・特別支援教育士SV・臨床発達心理士SV
教員や発達相談支援センターの相談員を経験してきました。幼児期から学齢期の発達相談、集団適応の難しい子どもの研究を行っています。

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